先日、「脂肪が燃焼し始める時に必要なのがL-カルニチンで、 L-カルニチン不足だと脂肪は燃えにくい」と書きました。脂肪を減らす為には脂肪をエネルギーに変える必要がありますが、その際に必ず必要なのがL-カルニチンなのです。
ここで、体内でL-カルニチンを合成するためにはL-カルニチンの材料である 「リジン」「メチオニン」「鉄」「ナイアシン(ビタミンB3)」「ビタミンB6」「ビタミンC」が必要です。これらの材料のうち、一番不足しやすいのが鉄です。
材料が揃わなければL-カルニチンを合成することが出来なくなる為、脂肪からエネルギーへの変換がスムーズに行われにくくなり、脂肪がつきやすい体になってしまいます。
本日はL-カルニチンの材料の中でも最も不足しやすい「鉄」についてご紹介します。
鉄(鉄分)はダイエットの強い味方
鉄(鉄分)とは
鉄は、生物の身体に必要な必須ミネラルの一種です。人の体内では合成することができないため、食べ物から補わなければなりません。
成人の体内には約3g~5gの鉄が存在します。
このうち70%は、赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンに存在しています(機能鉄)。主に、体内に取り込まれた酸素を全身に運ぶ大切な役割を担っています。
残りの30%は、肝臓や骨髄、筋肉などにストックされています(貯蔵鉄)。貯蔵鉄は、機能鉄が不足した際に使われます。
尚、食品や体内の栄養素としての鉄を示す場合に、一般用語として「鉄分」という用語が用いられることがありますが、栄養学的には「鉄」を用いることが多いです。
鉄は2種類ある
鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。
- ヘム鉄・・・肉や魚などの動物性食品に多く含まれる
- 非ヘム鉄・・・野菜などの植物性食品に多く含まれる
動物性食品に多く含まれるヘム鉄の方が、非ヘム鉄よりも体内への吸収率が高いそうです。
鉄の役割
- 酸素を運ぶ
- 細胞のエネルギー産生に関わる
酸素を運ぶ
生物は、呼吸して吸った酸素でエネルギーをたくさん作り出し、生命を維持しています。鉄は、その酸素を運ぶ役目を持つヘモグロビンの一部となって酸素を全身に運んでいます。また、ミオグロビンとして筋肉の中にもいて血液からの酸素を受け取ったりもしています。
細胞のエネルギー産生に関わる
ヘモグロビン内の鉄は酸素を運ぶだけでなく、酸素を使ったエネルギー代謝サイクルにも働いています。また呼吸やDNAの合成・修復、薬物や異物等の代謝など、細胞内でのエネルギー代謝にも関係しています。鉄はミトコンドリア内で脂肪を燃やすために必須なL-カルニチンの材料であるため、不足すると、摂ったカロリーをエネルギーに変換しにくく、脂肪として蓄積されやすくなってしまいます。
鉄の必要摂取量
1日に必要な鉄の量は年齢や性別ごとに違いがあり、女性は月経や妊娠の有無によっても変わってきます。
年齢 | 男性 | 女性 (月経あり) | 女性 (月経なし) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 7.5mg | 10.5mg | 6.5mg |
30〜49歳 | 7.5mg | 10.5mg | 6.5mg |
50〜64歳 | 7.5mg | 11.0mg | 6.5mg |
65〜74歳 | 7.5mg | – | 6.0mg |
75歳以上 | 7.0mg | – | 6.0mg |
さらに妊婦さんは上図の必要摂取量に加えて鉄を摂取する必要があります。
- 妊娠初期:+2.5mg
- 妊娠中期~後期:+9.5mg
鉄が不足するとどうなるか
「鉄不足」と聞いて真っ先に連想するのは貧血ですが、実は、冷えや疲労感といったエネルギー不足が原因の不調も起こります。また、鉄は精神発達にとっても重要な栄養素なので、メンタルの不調を引き起こすこともあります。
- 動悸
- めまい
- 肩こり
- 頭痛
- 筋力低下
- 皮膚・粘膜・爪・髪の毛のトラブル
- 氷を好んで食べる
- 注意力の低下
- イライラ感
- 食欲不振
- 抑うつ感
鉄がダイエットに役立つ理由
- 脂肪燃焼
- 運動機能をサポート
- ダイエット中のストレス緩和
脂肪燃焼
前述の通り、鉄は脂肪を燃やすために必須なL-カルニチンの材料です。鉄が身体に充足すると、脂肪からエネルギーへの変換がスムーズにいくため、太りにくい体質になります。鉄分をしっかり摂ることで、代謝アップにつながり、脂肪燃焼しやすくなるのです。
運動機能をサポート
体を動かすため必要なエネルギーと酸素を筋肉に届けるためには、鉄が欠かせません。しっかり鉄を摂ることで、エネルギーや酸素が十分に筋肉に行き渡り、運動の質が上がるため、効率よくダイエットが出来ます。
ダイエット中のストレス緩和
前述の通り、鉄不足はイライラ感や抑うつ感を招くことがあります。ストレスはダイエットの敵です。イライラしたり、落ち込んだり、気持ちが不安定になりやすいダイエット中こそ鉄を摂りたいものです。鉄はダイエットのイライラ緩和やモチベーションの維持にも役立ちます。
運動には鉄が欠かせない
運動時は日常生活より鉄を消費ししやすい
運動時は、筋肉を動かすためのエネルギーと酸素が必要です。
運動を始めると、酸素やエネルギーを供給するために、運動強度や筋肉量の増加に見合った血液・赤血球を必要とするため、材料となる鉄の必要量も増加します。運動強度の増加は体内への衝撃も強く、赤血球が壊れやすくなるため、必然的に鉄の消費量が増えます。
消費が激しい鉄を補給するためにも、運動に取り組む方には鉄の摂取をオススメします。
鉄を多く含む食材
鉄は、赤身の肉や魚、大豆製品、緑黄色野菜などに豊富に含まれています。
レバーの他、牛モモ肉、カツオ、あさりなどが特に鉄分が豊富です。
尚、肉や魚などの動物性食品に含まれる鉄分(ヘム鉄)は、植物性食品の鉄分(非ヘム鉄)に比べて体に吸収されやすいと言われています。
効率的な鉄の摂り方
- 動物性食品と植物性食品を組み合わせて非ヘム鉄を効率よく吸収する
- ビタミンCやクエン酸を多く含んだ食材と一緒に摂って鉄の吸収率を上げる
- 鉄の吸収率を下げる食材との同時摂取は控える
動物性食品と植物性食品を組み合わせて非ヘム鉄を効率よく吸収する
ヘム鉄よりも吸収率が低い非ヘム鉄は、たんぱく質を多く含む動物性食品と組み合わせて摂取することで、吸収率がアップすると言われています。バランスよく同時に摂取することで効率よく鉄を補給しましょう。
ビタミンCやクエン酸を多く含んだ食材と一緒に摂って鉄の吸収率を上げる
ビタミンCやクエン酸は、鉄の吸収率を上げてくれます。そのため、鉄を摂取するときには、柑橘類などビタミンCが豊富な食材と一緒に食べることをオススメします。食事にレモン汁やお酢をかけたり、梅干しをプラスするのも良いでしょう。
鉄の吸収率を下げる食材との同時摂取は控える
カルシウム、フィチン酸、タンニン、シュウ酸などは鉄の吸収率を下げるそうです。
特に、鉄不足を感じる方は、食事の前後に濃い緑茶や紅茶、コーヒーを飲むのは控えましょう。鉄分の吸収を妨げないための飲み物としては、水やウーロン茶、ほうじ茶などがおすすめです。
また、カルシウムもダイエット中に不足しやすく積極的に補給したい栄養素ですが、鉄と同時に摂取すると吸収率が低下してしまいます(カルシウムが鉄の吸収を阻害してしまいます)。 サプリメントなどで摂る場合は、摂取タイミングを数時間以上ずらしてください。
「鉄分はダイエットの強い味方」参考コンテンツ
本記事は下記コンテンツを参考に書きました。
- e-ヘルスネット > 健康用語辞典 > 栄養・食生活 > 鉄
- Nestle Health Science【鉄分とは?】鉄を多く含む食材と不足・過剰摂取による影響を解説
- 江崎グリコPOWER PRODUCTION MAGAZINE「運動に鉄分はなぜ必要か。ヘム鉄で効率的に吸収しよう」
- UHA味覚糖の「読ん」で「ケア」するメディアreadcare「鉄分でダイエットの効率アップ!燃焼サポート&代謝アップ。摂り方も解説」
- 一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所「栄養素の説明 – ミネラル【鉄】」